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 ケーキに目がない、「クリーミーマガジン」でおなじみの三田村蕗子が探偵団長となり、お菓子や食に関するさまざまな何故?どうして?の謎を直撃し、解明にあたります。
 ケーキやお菓子、食に関する素朴な疑問、質問、「あれも調べて!」という調査依頼もどしどしお寄せください。

File 04
 街を歩けば、クリスマスのディスプレイが目に飛び込み、耳にはおなじみのクリスマスソングが聞こえてくる―。そんな心躍る季節が到来しました。
 そして、クリスマスといえば絶対に欠かせないのがクリスマスケーキです。このクリスマスケーキ、毎年変わらぬスタイルを保っているかのように見えますが、時代を追っていくと、少しずつ移り変わっているんですね。そこで、クリスマスケーキの歴史をひもとき、時代時代のクリスマスケーキを探ってみました。
クリスマスケーキは平和の象徴だった!?
 クリスマスケーキが、イブの日には欠かせない菓子となったのはいつ頃からなのでしょうか。
 調べてみると、それは昭和20年代の後半にさかのぼります。昭和27年(1952年)に、砂糖と小麦粉の陶製が解除されたのを機に、洋菓子業界は息を吹き返しました。それまでは、戦後の食糧難が尾を引き、お菓子を作ろうにも材料がない、そんな時代だったのです。
 必要な材料が確保できるようになった洋菓子業界は、冷蔵ショーケースや冷蔵庫の普及にも支えられて、ショートケーキやモンブラン、シュークリームなどさまざまなケーキを一般家庭に定着させていきました。美しく飾ったクリスマスデコレーションケーキもその一つですが、これを最初に作り出したのは不二家>>だと言われています。
 不二家は、明治43年にはプラムケーキを砂糖衣で飾り、銀玉をつけたシンプルなクリスマスケーキを作っていました。当時は、こうしたシンプルなクリスマスケーキが主流だったのです。その後、苺が乗ったショートケーキタイプのクリスマスデコレーションケーキを造り、売り出しました。日本のケーキの歴史を考える上で、不二家は欠かせない存在なのです。
 昭和28年(1953年)に開始されたテレビ放送の力も見逃せません。クリスマスケーキのある食卓をビジュアルで伝えるテレビの普及が、クリスマスケーキを全国津々浦々に広めていきました。昭和27年〜昭和30年代のこの時代は、日本が戦後の焼け跡から復旧を遂げ、徐々に豊さを取り戻し始めた時期に当たります。クリスマスケーキは平和な日本の象徴と言うと大げさでしょうか。

高級品のアイスクリームタイプ登場
 昭和40年代に入ると、スポンジとバタークリームで飾り付けたクリスマスケーキに、新たなライバルが登場します。同じデコレーションでもアイスクリームで飾り付けしたアイスクリームデコレーションケーキです。夏の風物詩・アイスクリームで出来たケーキを、寒さ厳しいクリスマスに食べる―というのは、いわば究極の贅沢。日本人の暮らしがそこまで豊かになった証かもしれません。
 ところで、この頃のアイスクリームデコレーションケーキがいくらだったか、ご存じですか。大中小がそれぞれ、1000円、700円、500円前後。当時のサラリーマンの初任給の平均が2万3000円だったことを考えれば、かなりの高級品ですが、それでも爆発的に売れました。西洋伝来のクリスマスは、その頃すでにお正月と同じく、「1年のうちでも特別の日」の仲間入りを果たしていたのです。
 余談ですが、日本アイスクリーム協会>>が設立されたのがちょうど昭和41年。ドライアイス付きのアイスクリームデコレーションケーキの人気は、この協会のPRとサポートの力も大きかったようです。

豪華なデコレーションの後は、健康志向で甘さ控えめに
 昭和40年代前半に一斉を風靡したアイスクリームデコレーションケーキの人気は、そう長くは続きませんでした。昭和40年代後半に入ると、一気に減速してしまいます。
 もちろん、いまでもアイスクリームタイプのクリスマスケーキを販売する店はあり、固定ファンも少なくありません。しかし、クリスマスケーキの主役は、再びスポンジ+クリームスタイルに戻ります。
 ただし、その中味は確実に進化を遂げました。昭和40年代半ばからは、本格的なフランス菓子が人気を集め始め、バタークリームではなく、生クリームを用いたデコレーションが当たり前となり、デコレーションの技術も大幅にアップしたのです。
 この流れに貢献したのが、昭和43年(1968年)に日本で初めてフランス人としてフランス菓子専門店を開業したアンドレ・ルコント氏であり、昭和45年(1970年)に渡仏し、数々の菓子コンクールで賞を総なめにした後、昭和48年(1973年)に帰国してフランス菓子店「ブールミッシュ」を開いた吉田菊次郎氏です。
 70年代半ばを過ぎると、マジパン細工、アメ細工など高い技術を駆使した華麗なデコレーションケーキが増え、クリスマスケーキにもその流れが反映され始めます。
 80年代に入ると、甘いフランス菓子への反動なのでしょうか。健康志向が強まり、甘さを控えたり、ムースを土台に使ったりといった軽いてさっぱりとした口当たりのクリスマスケーキが人気を集め始めました。また、バレンタインのチョコレートやトリュフといったチョコレート菓子の人気を背景に、チョコレートでデコレーションしたクリスマスケーキのバリエーションも増え始めます。

百貨店が繰り広げるクリスマスケーキ受注合戦
 その後も、クリスマスケーキは通常の時期のケーキの流行を反映していくわけですが、いま注目を集めているのは、人気パティシェが作る限定のクリスマスケーキです。最初は、パティシェのお店だけで販売していましたが、90年代の後半に入ると、百貨店が「○○個限定」として、人気パティシェのクリスマスケーキの注文を受け付け、限定販売するようになりました。わざわざパティシェのお店に行かなくても、クリスマスケーキが手に入る、しかも、複数のお店の中から好みの品を選べるとあって、この限定販売は大人気。時代が21世紀に突入する頃から、多くの百貨店が我も我もと、クリスマスケーキの受注合戦に参入し、ますます加熱しています。
 注文受付の時期も毎年速まり、今年は11月の頭から受付を開始した百貨店もありました。それでも、すぐに完売するケーキも少なくありません。
 肝心の中身の方は、特に「これ!」といった特徴はないようです。チョコレートケーキが得意なパティシェは、チョコレートを使ったクリスマスケーキを、チーズケーキをメインとするお店ではチーズケーキ風のクリスマスケーキといった具合に、各自がそれぞれの得意分野を生かしてクリスマスケーキに挑んでいます。
 もう、みなが一斉に同じようなケーキに動く時代ではないでしょう。
 ただ、それでも、やっぱり圧倒的に人気が高いのは、イチゴのショートケーキ風クリスマスケーキ。イチゴの流通量が1年のうちでもっとも多くなるのは、クリスマス前だとか。いまも昔も、赤く可愛いイチゴは日本人のクリスマスの一つのシンボルといえるのです。