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★☆★━━━━━ 2004年9月のクリーミーレポート ━━━━★☆★

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タルトの謎
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 タルトと聞いて、あなたはどんなお菓子をイメージしますか? ビスケット
生地にクリームが詰まったフランス菓子のタルト? それとも、愛媛県松山市
を代表するあんこ入りロールケーキの銘菓、タルト?

 また世界を見渡すと、似たような名前のお菓子がいくつかあります。例えば、
トルタ、トルテ、タルタ。これらはみな違うお菓子なのでしょうか。それとも
ルーツは同じ?

 今月は、さまざまな謎を秘めたタルトの真実に迫ってみました。

●○● タルトのルーツ ●○●

 現在、洋菓子業界で使われている言葉、タルトはフランス語のtarte。円形
の皿形にビスケット生地(あるいはパイ生地)を焼いて、その中にクリームや
フルーツを詰めたお菓子を意味します。タルトレットというのは、一口サイズ
のタルトのこと。日本でタルト生地という場合には、固いビスケット生地を指
すのが一般的です。

 スペインにはタルタ (tarta)、ポルトガルにはトルタ(torta )という名
称のお菓子がありますが、こちらはカステラで出来たお菓子のこと。似ている
名前なのに、中身が異なるのはどうしてなのでしょう。

 実は、タルトもタルタやトルタも、ルーツは同じ。起源には諸説ありますが、
有力なのが古代ローマ時代に生み出されたという説です。中身だけではなく、
器までも食べたい!というお菓子好きの古代ローマ人が工夫を凝らして作り上
げたのかもしれませんね。

 吉田菊次郎先生の著書「西洋菓子彷徨始末」(朝文社刊)によれば、このお
菓子は15世紀から16世紀にかけて、2つの種類に分かれ始めたとのこと。
一つが、ビスケット生地のタルトですが、もう一つとは、「スペインでビスチ
ョコと呼ばれるスポンジケーキが開発されて、柔らかいお菓子の道を歩んでい
ったのがトルテ」(前掲書)なのだそうです。 

 ちなみに、スペインのビスチョコは結婚式などのお祝い事によく出される
お菓子で、ポルトガルから日本に伝来したカステラのルーツでもあります。つまり、
タルトとカステラとは親戚関係にあるお菓子なのです。

●○● トルテやトルタはスポンジ生地 ●○●

 では、ドイツのトルテやイタリアのトルタ、ハンガリーのトルタなどは、フ
ランス風のタルトなのか。それとも、柔らかい生地のタルトなのか。

 答えは後者。ドイツ菓子を代表するザッハトルテやイタリアのトルタ・ディ
・リコッタ(リコッタチーズのケーキ)、ハンガリーのドボシトルタなどを実
際に食べてみるとよくわかりますが、トルテやトルタはスポンジケーキの代名
詞でもあります。

 本来の意味のままで継承されたフランスを除けば、ほとんどの国で、タルト
は柔らかいスポンジケーキを意味するお菓子となりました。ビスチョコの登場
がお菓子の世界に与えた影響がそれほど強かったということでしょう。

 もっとも、日本は例外です。日本でいうタルトとは、冒頭で紹介したように
、ビスケット生地の器にアーモンドクリームやフルーツを詰めた形が基本型。
なぜかといえば、日本の洋菓子界はフランスの影響を強く受けているので、タ
ルトイコールビスケット生地のお菓子として定着したわけです。

●○● 愛媛県のタルトの由来 ●○●

 その日本に、なぜかカステラ生地のロールケーキにあんこを巻いたタルトと
いう和菓子が存在します。しかも、四国の愛媛県独自のお菓子としてー。

「の」の字のように柚子餡がカステラ生地に巻かれた見た目も美しいこのタル
トをご存じの方も多いでしょう。

 このタルトが日本で生まれたのは、今からおよそ三百五十年前。松山の久松
家の初代藩主である松平定行は、江戸幕府から長崎に派遣され、海上警備を命
じられました。この時、遭遇したのが、ポルトガルから伝来した菓子トルタで
した。定行は、きっと未知の南蛮菓子トルタの味に魅了されたのでしょう。
松山に戻った時に、トルタの製造法をお抱えの菓子司(菓子職人)に松山に伝え、
トルタの味を再現するように命じたのです。

 そうして誕生したのが、カステラに柚子餡を塗って巻き上げたタルトです。
日本に伝来した時には、カステラ生地にジャムがはさまれていたタルトを、菓
子職人は日本人の味覚に合うように柚子餡を使いました。本来の名称はトルタ
ですが、次第になまって、タルトという言葉に変わっていったようです。

 江戸時代までは、このタルトは城内限定のお菓子でしたが、明治時代に入る
と町の菓子店も作り始め、庶民からも愛されるようになりました。現在、愛媛
県内にあるタルトの製造業者はなんと約350社。1950年には、愛媛県菓子
工業組合がタルトを商標登録組合を作り、タルトの伝統にふさわしい菓子だけ
がタルトとしての発売を許されてきました。伝統を絶やさぬようにと、県をあ
げて育てられてきたタルトは、まさに愛媛の誇る銘菓といえます。

 長らく、愛媛のタルトはカステラ+柚子餡の組み合わせでしたが、1975
年に新種のタルトが登場します。ハダタ(http://www.hatada.co.jp/)が愛媛
県の特産物である栗とタルトを組み合わせて開発した栗タルトです。栗を使用
したタルトは他のメーカーからも発売が相次ぎ、粒ではなく栗を丸ごと入れた
ものなど、愛媛のタルトのバリエーションもいろいろと増えました。

 とはいっても、柚子をあずき餡でくるんで、カステラ生地で巻き上げるとい
うスタイルはいまも変わりません。遠く古代ローマに生まれ、2つの種類に分
かれて発展したタルトは、極東の国・日本では、スペイン・ポルトガルの流れ
を汲みながらも、日本人の味覚にマッチしたお菓子としていまも愛され続けて
いるのです。
文責:三田村蕗子

■□■□■□■□ クリ−ミーレポート by nakazawa □■□■□■□■

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