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★☆★━━━━━ 2003年2月のクリーミーレポート ━━━━★☆★
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恋愛小説に登場するお菓子
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もうすぐバレンタインデーがやってきます。誰にどんなチョコレートを送
るか、もうあなたの心は決まったでしょうか?
今回は、バレンタインデーを前にして、恋愛小説に登場するお菓子を取り上
げます。甘く切ないラブストーリーの大切な引き立て役となるお菓子を小説
を参考に作ってみるのも楽しいかもしれませんね。
●○● コアントロー味のシュークリームがお好み ●○●
恋愛小説の作家たちはどんなお菓子を登場させているのだろう。こう考え
ながら恋愛小説を当たってみると、面白い傾向に気づきます。男性作家の作
品で、菓子が重要な役割を果たすものは非常に少ないのです。登場しても、
それは単に「ケーキ」や「アイスクリーム」といった表記に過ぎず、どんな
種類なのか、どんな味なのかという詳しい描写はほとんどありません。
味や材料を細かく書き込む作品が多いのはやはり女性の作家。お菓子に対
する関心の度合いと比例しているのでしょうか。
いま活躍中の作家でいえば、江國香織さんの小説にはデザートを始め美味
しそうな食べ物が頻繁に登場します。
アル中の妻とゲイの夫とその恋人との奇妙な三角関係を描いた恋愛小説「
きらきらひかる」で印象的だったのは、主人公の笑子が昔の恋人の夢を見る
シーン。夢の中で恋人から彼女に送られたシュークリームはコアントロー味
なのです。コアントローとはオレンジから取れるリキュールのこと。わざわ
ざ「コアントロー味」と特定するあたりに、江國さんのお菓子に対する関心
の高さがうかがえます。
笑子は、夢から覚めると、夫にこの味のシュークリームをリクエストしま
す。彼女の心の流れをコアントロー味のシュークリームがうまく表している
のではないでしょうか。
また、「レーズン入りのドーナツってどうしていつもシナモン味なのかし
ら」という主人公・笑子の台詞も興味深い。確かに、レーズンとシナモンは
ペアで使われることが多いのですが、これもまた作者の常日頃の疑問があれ
ばこそ。 そういえば、江國さんの小説には、食べ物の名前を起用したもの
が本当に多い。「すみれの花の砂糖づけ」「ウエハースの椅子」「綿菓子」
「すいかの匂い」。作品中にも、食べ物の描写、それも菓子の描写が多く、
江國さんはかなりのデザート通、菓子通と見ました。
●○● デザートは女性!? ●○●
グルメで料理も上手な作家というと、今は亡き森瑶子さんが思い出されま
す。数々の恋愛小説で女性ファンをとりこにした彼女ですが、お菓子がらみ
としては、そのものずばりのタイトル「デザートはあなた」が忘れられませ
ん。大手広告代理店に勤める名うてのプレイボーイ・大西俊介が女性を自宅
に招き、料理を披露しながらくどくという短編集で、この大西俊介のくどき
文句がなんともすごい。
「僕が酔ったのはキミの魅力。デザートはキミ」。このセリフを彼は決め
台詞にしているのです。ただし成功することはほとんどないのですが…。
幼少期はあんころもちが好きだった大西俊介は、現在は甘いものが苦手。
また、デザートは女性という位置づけなので、各回のメニューにはデザート
はなし。ただし、最終回にはそれまでの穴を一気に埋めるかのようにデザー
トが登場します。俊介がこれまでくどいた女性たちが一堂に会してサプライ
ズパーティを催し、俊介にデザートを勧めるというあらすじです。
この回に出てくるデザートを紹介しましょう。チーズケーキ、バナナクリ
ームパイ、ティラミス、カラメルアイスクリーム、チョコレートムース、フ
ルーツコンポート、そして飲み物はシャンパン。俊介は一口ずつこれらのデ
ザートを食べ楽しい夕べを過ごしますが、その後、切ない気持ちにかられま
す。デザートとは、種類の多さよりも、一つに絞ってその魅力を堪能するこ
とに意味がある―。男女関係も同じ、そんな風に思えます。
●○● あしながおじさんとチョコレート ●○●
恋愛小説、というと異論があるかもしれませんが、少女の心をときめかせ
たという点では「あしながおじさん」も恋愛小説の一つではないでしょうか。
アリス・ジーン・ウェブスターが書いた「あしながおじさん」のストーリ
ーはもうみなさんご存じのことでしょう。孤児のジルーシャは、知性、才能
、将来性を認められ、名前も知らないある男性の援助で大学に入ります。資
金援助の条件は、その男性に手紙を書くこと。ジルーシャは、彼を「あしな
がおじさん」と呼び、大学生活や夏休みの農園暮らしなど日々の心情をユー
モアたっぷりに書きつづっていきます。最後には、すでにジルーシャの前に
出現していた「あしながおじさん」と結ばれるわけですが、この手紙に出て
くるお菓子の描写は食欲をそそられること請け合いです。
その一つがファッジ。
砂糖、バター、牛乳、チョコレートなどで作った
柔らかいお菓子で、キャンデーの一種です。ある日、晩餐会でジルーシャが
食べたメニューは、イワシ、丸パン、サラダ、ファッジ、コーヒー。料理自
体はなんとなくさびしそうなラインナップですが、それを補っているのが甘
い甘いファッジなのかも。
またある日には、同級生の若い叔父さんであるペンドルトンさん(実はあ
しながおじさん)からチョコレートをプレゼントされます。この時、ジルー
シャは手紙にこうつづりました。
「男のかたからお菓子をいただくなんて! あたし自分が捨て子だったこ
とを忘れて、娘らしい気持ちになりました」(遠藤寿子訳 岩波少年文庫よ
り)。
ペンドルトンさんへのジルーシャの淡い思いは、このチョコレートから始
まったのかもしれません。チョコレートのプレゼントには、男性だけでなく
女性のハートをくすぐり、「自分が女性であること」を意識させてくれる強
い力があるといえそうです。
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