| ■小説アルト・ハイデルベルクの舞台 |
日本人に人気のロマンティック街道よりも西に位置し、西はフランスと、南はスイスと国境を接し、広大な針葉樹の森が広がる一帯―それがシュヴァルツヴァルト(ドイツ語で黒い森)地方です。
中世の街並みが残り、文豪ヘルマン・ヘッセの生誕の地でもあるシュヴァルツヴァルトは、鳥が飛び出して時刻を告げる愛らしい鳩時計の本場でもあります。どこかしらアカデミックな雰囲気が漂うこの一帯には、自然を満喫できるハイキングコースが整備されていることでも知られ、ハイデルベルクとコンタンツの町を結ぶファンタスティック街道は、最近ではロマンティック街道に迫る人気観光コースとなりました。
ハイデルベルクと聞いて連想されるのが、マイヤー・フェルスターの名作「アルト・ハイデルベルク」。ドイツ最古の大学ハイデルベルク大学に留学した
ザクセン=カールスブルク公国皇太子のカール・ハインリヒが過ごした4カ月の日々を、下宿屋の娘ケーティとの恋物語を軸に描いた青春小説です。
昔この物語を読み、舞台となった町を一度は目にしたいと、ハイデルベルクの町に足を運ぶ日本人も多いとか。伝統と歴史に彩られた町で繰り広げられる皇太子と町娘との<身分違いの結ばれぬ恋>という甘酸っぱい筋書きは、いわば「ローマの休日」の逆バージョン。小説「アルト・ハイデルベルク」は、本国よりも日本での評価の方が高く、何度も舞台化されました。日本人の心をつかむキーワードがふんだんに散りばめられているところが人気の秘密なのかもしれません。
この小説を読んでからハイデルベルクに行くと、旅情がいっそう盛り上がることでしょう。
(注)日本では岩波文庫に収録されています。図書館に行けば手に入ります。 |
| ■足を伸ばして、シュネーバルの町へ |
シュヴァルツヴァルト地方からはやや離れますが、シュヴァルツヴァルト地方を訪れた人が必ずのように足を運ぶのが、お菓子の町ローテンブルク。古城街道とロマンティック街道の分岐点に当たるローテンブルクは、シュネーバルというケーキでも有名です。
ドイツ語で雪の玉(スノーボール)を意味するシュネーバルは、その言葉通り、雪のように白い玉を魅したケーキ。ローテンブルクには、手のひらにちょうど乗るぐらいの直径10cmほどのシュネーバルの専門店がたくさん軒を並べています。
シュネーバルの作り方は素朴そのもの。紐状のクッキー生地を巻き上げて、油で揚げ、粉砂糖がまぶしてありますが、ココアパウダーやシナモンパウダーをかけているものもあり、白い玉、黒い玉の中からお好みのタイプを選べるというわけ。作り方はシンプルながら、ボリュームがあっても口の中でほろほろと崩れる独特の食感が後を引き、さくさくと食べられるのがシュネーバルの魅力。作り方は決して難しくないので、一度試してみてはいかがでしょう。 |
| ■甘酸っぱさと苦み、甘さが調和した味 |
今回、吉田菊次郎先生には、シュヴァルツヴァルダー・キルシュトルテを作っていただきました。この地方の名産品であるサクランボ(キルシュ)と黒い森を模したチョコレートのスポンジケーキ、生クリームとアレンジしたケーキです。
主役はサクランボですが、サクランボを発酵させて蒸留したフルーツブランデーの一種であるキルシュワッサー(通常はキルシュと呼ばれます)もこのケーキにはぜひ使いたい重要な脇役です。サクランボとキルシュワッサーとのダブル使いで、サクランボの甘酸っぱい風味を効かせると、チョコレートの苦み、生クリームの甘みとうまくマッチして、なんともいえない美味しいハーモニーを醸し出します。
そして、このケーキの素晴らしいところは、カットした時に現れる模様です。スポンジケーキと生クリームを交互にサンドした断層の美しさもまた、このケーキの大きな魅力の一つです。
ちなみに、シュヴァルツヴァルダー・キルシュトルテはフランスのアルザス地方でもよく作られ、フランスではフォレ・ノワール(黒い森)として愛されています。美味しいケーキは国境を越えるーということでしょう。
サクランボの美味しいこの季節はもとより、缶詰のサワーチェリーを使っても十分に美味しくいただけるケーキです。
シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテの作り方 >> |
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次回、イタリア/トスカーナ地方です。お楽しみに! |
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